『丹沢・大山遭難対策研修会』
皆様は、大山を登山初心者向けの簡単な山だと思っていませんか? ケーブルカーで登れる下社までなら、あながち間違いではありませんが、そこから上、1,252mの山頂まで登るとなると、その様相は本格的な登山の領域に一変するのです。
伊勢原警察署によると、2021年度には36件41人の山岳事故が報告され、過去には死亡事故も発生しています。これは特に下山時に事故が集中しており、その原因は登りでのオーバーペースが大半であると言われています。
こうした現状を何とかしようと、市と包括協定を結んでいる「モンベル」さんに主催いただき、関係者を対象とした『丹沢・大山遭難対策研修会』と銘打った安全登山のための講習会が開催され参加して参りましたので、ちょっと旧聞に属しますが報告します。
当日は、日ごろ大山で山岳ガイドとして活動されている上村博道さんを講師に、プロのガイドや市職員など16人の参加者が集まり講習会がスタートです。特にオーバーペースを避ける理想的な「一分間に60m進む」という安全なペースを体感します。
下社から登拝門をくぐり霧の本坂へ、山頂までの標高差600mは、ガイドブックのコースタイムは90分ですが、安全登山の理想タイムは「1時間(60分)に300m登る」なので、2時間(120分)かけて登ります。当然多くの登山者に追い抜かれます。
要所要所で立ち止まり、プロのガイドさんが花や岩石など得意分野を解説してくれます。 登山道に咲く小さな花にも名前があることに改めて気付かされました。白い花はマルハスミレ、紫はタチツボスミレだそうです。
10時に下社を出発し、2時間以上かけて12時過ぎに山頂にゆっくり到着しました。雨上がりの見事な雲海が眼下に拡がり、改めて眺望の素晴らしさに感嘆しました。
ゆっくり登ると体力に余裕が生まれ色々な物に目が届きます。
昼食休憩後、13時に雷ノ峰を見晴台方面へ下ります。特に七沢方面への分岐では道迷いの防止のためにコースの確認の徹底や、鎖場での安全確保の実際などレクチャーを受けながら下山しました。
見晴台では過去に起こった落雷事故を教訓として、気象予報士でもある講師から天気予報の重要性について学びました。特に今はスマホアプリを活用して的確な情報を得ることができます。
下社には15時半過ぎに戻って来ました。ゆっくり歩いてきたお蔭で疲労感も全くなく、翌日以降の筋肉痛に悩まされることも皆無でした。
今回の研修で学んだことは「山は頂上を極めることだけではなく、ゆっくり時間をかけて花や木、岩石などの自然に触れ、風を感じて楽しむことが重要で、それが事故防止につながる」という、正に目から鱗が落ちる心境でありました。
皆様も是非「1分間に60歩歩き、1時間で300m登ると」いう安全登山ペースで、大山を歩いてみて下さい。今まで見落としていた魅力にきっと出会えると思います。